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クレオパトラの夢

今回はMAZEの不思議な雰囲気はなく、とても現実
的なミステリです。
「クレオパトラ」というキーワードが解けた後も誰も
彼もが何かを隠し、騙しあっていきます。
「木曜組曲」や「不安な童話」に似て物語が展開する
毎に意外な方向へ進む面白さがある一冊でした。
二転・三転するので途中で止められず一気に読まされ
ました。

今回のメインは登場している4人の個性。
よく考えると恩田さんって主役級を4人にするの好き
ですよね?
MAZEもだし六番目の小夜子もだし黒と茶でも4人
でしたし・・・・。

恵弥だけでも個性が強いと思っていたのに、和見も慶
子も多田も一筋縄では行かない人達ばかり。
しかも肝心の語り部・恵弥さえも何かを隠している雰
囲気があるので読んでいて私自身が疑心暗鬼になりそ
うでした。(笑)

ただ恩田さんの魅力の一つで読んでいて鮮やかに浮か
ぶ風景が今回はなかったですね。
肌で感じる季節感も薄いし・・・・・そういう意味で
はちょっと物足りなかったかな。

クレオパトラを読んだ後みてもう一度MAZEを読み
たくなってしまいました。


















まひるの月を追いかけて

まず最初の感想は今までの「恩田陸さんの本とは少し
違う雰囲気を持っている」でした。

恩田さんの魅力は神秘的な雰囲気を持った主人公たち。
ところが今回はそれぞれに弱さと闇を持っている人たち
ばかり、生まれ育った家庭を欠陥に思い仮面を被って生
活している彼ら。
でも何となくそういう事って私たちも実際に感じてる事
かもと思えるのですよね。
旅に出る前に旅をキャンセルしたくなる静の気持ちは何
となく分かりますし、遠い場所にいっても自分のいる場
所はココ。
だから何からも逃れられない等、妙に説得力のある言葉
が沢山出てきます。

憧憬や、ノスタルジックな雰囲気はありませんが等身大
の主人公たちの魅力がある一冊です。
大人の恩田本と言った感じでしょうか。


オール讀物の連載だったので1章ごとにラストが思わせ
ぶりです。
それぞれに別の物語が入っていて中には「猿の手」のよ
うに誰もが一度は聞いたことのあるような物語も入って
いるのも面白かったです。















蛇行する川のほとり

少女達の一夏。
心の隅に引っ掛かっていた記憶の糸がある一人の少女の
意思と共に川のほとりに溢れかえる。
美しき少女の秘めた過去とは何なのか。
そして二つの人物の死はどう繋がるのか。

私は誰を殺したの?
誰が彼女を殺したの?

6人の少女と少年が語る物語の結末は?

恩田さんの魅力は情景の美しさ。
文章を読みながら視界には木漏れ日が、夏の日差しが
そして川の流れる音まで聴こえてきます。
ミステリとしても上手く纏まっていますがそれ以上に
登場人物の聰明さに惹き付けられます。

待ち遠しかったけどリアルタイムに読んだからこそあ
る満足感で一杯の三冊でした。














六番目の小夜子

転校生とは何時の時代も「謎」であり「神秘的」な存在。
加えて美少女であれば尚更その存在は光る。

津村沙世子が転校して来たのは小夜子伝説のある学園。
彼女もまた伝説の影の役者に呼ばれてココに来た。
ホラーの要素を出しながらもどこか懐かしく、憧れさえ
持ってしまう沙世子や関根秋達の学園生活。
主人公達があまりにも魅力的なので問題の「小夜子」に
関しては少々存在が薄れがちになるが、冒頭とラストに
出てくる「灰色」の世界、小夜子は確かに学校に存在し
幾人もの生徒達を迎え・送りそして彼女達の青春時代を
共に過ごしているのが分かる。

この物語の魅力は登場人物と学園祭の場面。
文章をただ読んでいるだけの筈なのに読者は体育館の中
にいる一人と化し生徒達と共に「サヨコ」を感じ恐怖や
緊迫感を味わうだろう。

恩田陸氏の魅力が詰った作品。

関根秋の一家はこの後の作品で出てくるので要注意!













黒と茶の幻想 

学生時代の同級生だった節子・彰彦・蒔生・利枝子。
4人は卒業19年後にY島の密林の中へ『美しい謎』と
自分達の過去を見つめる旅に出る。

1章毎にそれぞれの主観から物語が語られる。
そして彼らの心に抱える『美しい謎』は時に過酷な過去 
の暴露へと続きそして自分自身忘れ去りたかった過去す
ら思い出させる旅へとなります。

全ての出来事が「過去」であり、尚且つ短い旅行、普段
共に生活しない離れた存在の「友」、そして異空間とも
思える大自然・密林の中だからこそ『美しい謎』解きと
して過酷な過去を蘇らす事が出来たのであろう。

さて私がこの中で一番好きだったのは彰彦。
そして自分に一番近いと思ったのは蒔生。
あなたは誰?














不安な童話

人の心に共感しその人が見失った過去を垣間見ることが
出来る才能を持つ万由子。
操作できない才能の為、見たくないものも突如見える。
そして全く知らない筈の女性殺害場面を見た万由子。
同じ箇所にある痣は彼女の生まれ変わりを意味してるの
だろうか?

恩田氏の本はミステリの中にも不思議な才能や魅力的な
登場人物が出てくるので単なるミステリでは終わらない。
さて今回は登場してくる人が皆犯人になり得る「何か」
を持っています。
そして結末は意外さ。
彼女達が抱える「不安」な部分は心の奥底にまた閉じ込
められ、いつ見られるか分からない「不安」さに怯える。
もし万由子がその部分を見てしまったら?そう思うと結末
を迎えながら終わらない物語だなと思いました。














劫尽童女

表紙の柔らかい雰囲気と内容のギャップがある作品です。
人よりも優れた能力、光の帝国でもこのような人物は出て
来ますが、この物語では人が作った人の叡智を越える存在。

クローン、遺伝子操作。
人であり人ではない存在。
もし自分がそのような生き物だとしたら?
研究の元で生まれた生命、知能、運動神経全てが人より勝り
そして人から狩られる存在の「遥」。
人々の動きを常に見、誰が味方で誰が敵なのか判断しなけれ
ばならない幼き少女。
読みながら遥は何処に辿り着き、何処に居場所を求めるのだ
ろう、そして彼女は生き残れるのだろうか?とハラハラしな
がら読み進めました。

悲しみや苦しみを感じる間もなく闘うだけの戦士。
少しだけナウシカに似た雰囲気のある少女ですね。
そう思うのは私だけかもしれないですが。(笑)

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